azusatokohaの日記

人生ラバーダッキング会場

鍋に弾丸を受けながら 読みました(読んでいます)

資料1.

comic.webnewtype.com

資料2.

alu.jp

グルメ漫画とかを全くと言って良いほど読まないので、『鍋に弾丸を受けながら』がどのくらいクレイジーなのか分からないけれども、いい作品に出会ってしまった~。ただ、読もうとするとき、必ず『鍋弾丸を』とggってしまう。脳みそを使え人類。

内容としては、治安だったりなんだったり、危険と呼ばれる地域で出会ったメッチャクチャ美味しい食べ物を紹介してくれるノンフィクション食レポ漫画。フィクション食レポ漫画というジャンルが成立するかどうかは置いておき、危険なモンスターの潜む洞窟の奥、とっておきの美味しいスライム…じゃない、『地球の歩き方』で黒塗りにされているような*1危険地帯で出会った食事の数々が紹介されている。っちゅってもまだ5品だけど(2021年9月時点)。

この作品を初めて見たのは、たしかTwitterで1話が丸ごと掲載されていたから*2。荒廃した末の廃村跡地で豪快に作られる、通称「マフィアの拷問焼き」。読んでなかったら一回読んできてくれ。Twitterの6ツイートで収まるんだから24ページ以下。

「マフィアの拷問焼き」は、メキシカンマフィアの伝統的処刑法で、服を着たまま立ち上る炎へ入らせ、中々燃えない服と身体に苦しみ果て焼きあがる。焼きあがったのがこちらです、召し上がれ。って何の肉ですかそれ。まさかとは思いますが口に出すのも恐ろしい、ヒューマンミートですかまさか。と疑ってしまう見事な構成。やられた。

このミスリードには若干の不安もあったようだけれども(資料2.)、個人的にはもののみごとに刺さってしまった。「美少女」の件も併せて、なんだか認識の根幹みたいなところを軽くノックされたような感じがあって最高。

で、この主人公(原作者)、「長年に渡る二次元の過剰摂取で壊れてしまって」「世界には基本的に美少女しかいない」わけなので、登場人物が基本的に美少女しかいないこの漫画は、まったくノンフィクション作品であると言える。もし主人公(原作者)の脳にセンサーを取り付け、映像をそのまま出力したとしたら、この漫画と同じ画面が得られるわけである。たとえばツーショット写真を基にキャラクターデザインをしてしまったらそれはフィクション作品だ。根拠のあやふやな写真というメディアに頼らず、きちんと脳内の記憶が抽出できている素晴らしい作品といえる。

そして、なぜその地域が危険と言われてしまうのか、といった要素にもきちんと触れている。「ここはとっても危険なんですよ~、でも危険なの怖いから美少女だけにして危険要素を除きました!」じゃなくて、きちんと危険たる所以が表現されているのも、ノンフィクション作品としての誠意を感じる。

そんなわけで最近はこの作品の更新をけっこう楽しみにしている。あと単行本。そしてCOVID-19が落ち着いて新規取材解禁も待ってる。

以下ここすきポイント

  • #2 イタリアン・ビーフ - ラストの語りが良い。国境を超えた美少女の友情、絆、恩義に報いるみたいなの、単純に良くないですか?ぼくはすきです
  • #3 オレンジジュース、#4 豚足のファビュラ風 - 個人的に今公開されている中で一番好きな回(特に#4)。#2でも挙げたような美少女の友情関係も良いんだけれど、それと、それを紡ぐ言葉がなんというか美しいんだよな。生きている魚は~のくだりといい、サウダージといい。その土地と人に長く触れた末の、そこにある美を汲み取って、その美を描いているというか。
    あと「スラムの料理というから荒いかと思っていた」「無知な偏見だ」というセリフ(ないしモノローグ)がめちゃくちゃ良い。たしかに同じ偏見を持っている。スラムの料理は、今日一日を生きるための、単調で彩りのない、そういうものだという偏見が確かにある。でも、そこには人の生活があり、祝い事があり、あるいは弔事がある。単調ではない、生活があるならば、食事だって単調ではないだろう。そういう気付かぬ「当たり前」が、たぶんたくさんある。
  • #5 エルビス・サンドイッチ - なにも、目前に銃があり、いつどこから弾が飛んでくるか分からない、という光景だけが「危険」ではない。むしろ、日常と地続きのどこか、見えない一線を越えた時、あずかり知らぬ危険がそこにある、というのも、背筋に来るタイプの危険だ。本当は物凄い恐怖のシチュエーションなんだろうけど、こういう話が箸休めになるあたり、マジでカロリーの高い作品である。

で、単行本まだ?

*1:読んだことが無いので知らないが、一般向け旅行ガイドでは、危険地域に旅行者が近付く事の無いよう、黒塗りにされていたり、そもそも無かったことにされている

*2:森山慎@「鍋に弾丸を受けながら」連載中(作画担当) on Twitter: "美少女(?)が危険地帯で飯を食う話「鍋に弾丸を受けながら」(1/6)"