電気というものが無くてはならないリソースになり、常に一定の電力を世間に供給しなければならなくなった。すると、原子力発電に代表されるような、一定のコストで一定の出力を確保できるベースロード電源という存在が生まれた。
ベースロード電源は、常に一定の電力を供給するが、電気は需要と供給がバランスしなければならないため、この電力を何かで消費しなければならない。揚水発電所でタービンを回して水に位置エネルギーを付加するとかそういう需要である。
さらに深夜電力などの「夜間に安くなる料金プラン」を設定し、余剰な電力を「安く売ってでも使ってもらう」インセンティブを設計する。
さて、AIの計算リソースというのも基本的にはリアルタイム消費物であって、誰かがプロンプトを投げた瞬間にGPUが発熱を始める。一方で、GPU(ひいてはDC)を保有する企業としては、常に何かしらの需要に応じてGPUをぶん回せれば、その分の売り上げが立てられる。
となると、「深夜AI」などの「夜間に安くなる料金プラン」を設定し、余剰なGPUリソースを「安く売ってでも使ってもらう」インセンティブを設計するようになるのではないか。
そして地理的制約のある電力とは違い、計算リソースは全世界的にシェアできる。日本の昼間は欧米のオフタイムにあたるから、向こうで暇を持て余しているGPUをこちらで使えると考えると、日本が安くAIを使い倒せる時代が来るかもしれない。
ぼくらはOpenAIの「Midnight AI」を契約し、「Midnight Codex」でプログラミングするんだ。
現実にもAWSとかのスポットインスタンスがそれに近い思想で、需要の少ない計算リソースをオークション的に安く提供している。あれが一般的なAIサービスの課金に拡張されれば、日本の昼間に使うAIはより安くなる。
オフショア開発や時差を利用した連続稼働など、グローバルの連携を活かした「欧米の夜間」という立ち位置を、より有利にする要素としてAIの低価格化は重要だ。今すぐに日本国政府はAI開発企業に時差料金を強要しなければならない。
ただしここに、エージェント型AIというやつが水を差してくる。
初期の生成AIの使い方というのは基本的に即時応答で、人間が問いを投げてAIが答えるという繰り返しを前提としたものだった。しかしエージェント型のAIというのは、人間のタスクを自律的にこなすので、必ずしも即時に応答される必要は無い。
バックオフィス業務の代替なんかがその典型で、たとえば伝票の仕分けなど、昼間にキューを積んでおいて夜間に捌いておいてもらえば必要十分だったりする。こういう「バッチ的に処理できれば良い」という需要はエージェントAIにぴったりだ。
そうなると、欧米のAIエージェントが「リソース単価の安い時間帯に仕事をシフトする」ようになる。欧米の夜間が安いなら夜間に使う。世界中がそれをやり始めると、当然日本の昼間はリソース争奪戦になり、計算リソースの単価が上がり、「昼なのにGPUが安い」という日本の優位が崩れる。
つまり、地理的な非制約と時間的な非対称性を利用したコスト最適化戦略は、時間的な非即時性をもって無効化される。
結局は電力会社がスマートグリッドによって需要を動的に制御しようとしているように、計算リソース側がエージェントの稼働タイミングを誘導するような動的課金を設計するか、あるいはそれ自体の制御もAIに任せるか、という話になるんだろう。
リソースを制御するAIは、働きたいAIが「働ける」時間に対して値段を提示する。労働を制御するAIは、働きたいAIがより安く働ける時間帯を探し求める。
そしてもうひとつ、価格とは全く別の軸で、法的規制により地理的分散が起きる可能性がある。
各国で独自のAI規制 ──たとえば、個人データを扱うAI処理は特定の地域のサーバーで行わなければならない、あるいは特定の用途のAIモデルは規制の厳しい地域では使えない、といった制約が生まれると、そのAIが走る計算リソースの所在地がどこか、という制約事項が需要に加わってくる。
逆説的に言えば、規制の地理的非対称性が計算リソースの地理的分散を半ば強制するとも言える。規制の緩い地域に処理をシフトしようとし、そのような地域ではデータセンターが増え、電力が物凄い勢いで食いつくされていく。または特定の地域内で安く計算できる場所が、物凄い勢いで必要になっていく。
そういった地理的要請は、どこか特定の地域、おそらく産業の創出の為に緩い規制を採用する地域に、計算リソースの提供を経済的に強要する取引を招くだろう。
社会はなんだってそうだ。都市に必要なリソースは、そのリソースを産むために必要な地域に、経済的に強要するように(ありていに言えば札束で殴って)提供させる。
食料が要るなら田園地帯から買ってくる。
水が要るなら村を退かしてダムを作る。
電気が要るなら海岸に原子力発電所を作る。
住居が要るなら地理的に近い田舎を拓いてニュータウンを作る。
安全が要るなら敵の近くに軍事基地を作る。
そして計算リソースが要るから、どこかにデータセンターを作るのだ。
【この本文は、日本の昼間時間帯に、Claudeの協力により作成されました】