azusatokohaの日記

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Nekochang Emoji Sequenceの検討

Unicodeに導入されている絵文字(Emoji)は、人類の多様性に応じて、肌色の変更機能(Emoji Modifier Sequence)、家族・職業絵文字における家族構成のカスタム機能(Emoji ZWJ Sequence)などが用意されている。「自信を的確に表現できるEmojiを持つ層」を増やすためには、良いやり方であると思う。

しかし、こういったEmoji機能が、人間のみにしか用意されていない、というのは問題だ。インターネット利用者層は、スマートフォンの普及などもあり、全世界的に拡大し続けていくだろう。それは、種族の垣根を超えて、ありとあらゆる、生きとし生ける者へと広がっていく事に、最早異論は無いだろう。

そこで考えると、人間以外の動物において、いち早くインターネットへの接続を得る者は、犬・猫といった、ペット的動物類であることは、想像に難くない。しかしどうだろう、現状のUnicode Emojiは、彼らを迎え入れる準備ができているのだろうか?

否である。Unicode Emojiにおいて、ペットたちを表すEmojiはほんの少しである。犬では「Dog🐕」の他「盲導犬🦮」「サービス犬🐕‍🦺」そして「犬の顔🐶」と「プードル🐩」が用意されている。

これらの表現方法を確認していく。Unicode Emojiでは、世界中あらゆる言語のあらゆる文字をデジタル処理するための「Unicode」(原義としては、たった一つのコード、とでも言えば良いか)に、日本の携帯電話が発祥である絵文字が収録されている(Unicodeに文字として認められ、デジタル処理用のコードが与えられることを、収録と言う、以下同じ)。犬であれば、「🐕」という文字は、U+1F415というコード(Codepoint)が与えられている。このコードで、「🐕」は「🐕」以外のあらゆる文字と区別される。

次に、犬におけるEmoji ZWJ Sequenceを見ていく。一般に広く知られているように、犬には、様々な職業が存在する。盲導犬、警備犬、麻薬探知犬など、多くの職業に従事する犬たちが居る。さて、これら職に就く犬のEmojiは、Emoji ZWJ Sequenceという表現方法によって実現する。これは、犬を代表するEmoji「🐕」に、職業を代表する絵文字「安全ベスト🦺」を連結することで、犬の様々な職業を、大規模なコードの追加をすることなく表現できる方法だ。「サービス犬🐕‍🦺」は、内部では「🐕(連結)🦺」という表現で表されている。連結に、Zero Width Joinerと呼ばれる連結コードを使うことから、Emoji ZWJ Sequenceと呼ぶ。

しかし、ここで問題がある。「人間は従事せず、犬のみ従事する職業」の存在である。警備犬、麻薬探知犬などは、人間と共同して従事している職業であり、その象徴が、人間も着用する「安全ベスト🦺」だった。しかし、盲導犬に関しては、人間に対応する職業が存在しない。「介助者」あたりが類似であるが、この2つの種族に共通する視覚的アイテムは存在しない。「盲導犬🦮」Emojiは、この問題に対して、「盲導犬🦮」単独で収録することで対応した。CodepointはU+1F9AEである。

これは、後世に残る大きな技術的負債である。特定職業の人間に対してCodepointを割り当てるのは、「建設作業員👷」他多くの職業Emojiに共通しているが、実際には「👨(連結)🦺」とするべきだっただろうし、実際に「調理師👨‍🍳」は「👨(連結)🍳」という表現を用いている。将来、建設作業犬や調理猫といった職業が普遍化していく中で、人間のみが単独のCodepointに職業Emojiを持つ状態は、技術的に残る差別意識の表れである、と言わざるを得ない。同様に、盲導キジ、盲導猿といった職業が普遍化していく中で、犬のみが「盲導」職を占有しているかのような技術的表現は、負債となり得る。さらに後方互換の問題から、「盲導犬🦮」Emoji普及後の世界でこの格差を是正することは非常に困難である。

さらに、毛色の問題がある。人間に対しては肌色や髪質を選択する機能Emoji Modifier Sequenceが存在している。これは、Skin Tone Modifierと呼ばれる肌色選択文字(例:「Light Skin Tone🏻」)を用いる事で、多様な肌色に、組み合わせ爆発を避けながら対応することに成功させたものである。この機能は、猫では「黒猫🐈‍⬛」に採用予定がある(2020年後半収録予定)。

このような現状の中で、将来的にNekochang Emoji Sequence、ひいては動物Emoji Sequenceを実現していくためには、慎重な実装を行わなければならない。現在は、「猫:恐れる顔🙀:🐱(連結)😩」「猫:怒る顔😾:🐱(連結)😡」「猫:泣き顔😿:🐱(連結)😢」「猫:ニヤリ顔😼:🐱(連結)😏」「猫:笑う顔・ハート目😻:🐱(連結)😍」「猫:笑う顔😺:🐱(連結)😀」「猫:笑う顔😸:🐱(連結)😄」「猫:笑い泣き😹:🐱(連結)😂」「猫:キス😽:🐱(連結)😚」が用意されている。これらを拡張していくにあたっての要件は、以下のようであろう。

  1. Nekochang Diversityに配慮し、多種多様なNekochang Lifeに寄り添ったEmoji表現を可能としながらも、必要Codepointを最小限に抑える。
  2. 動物全体の公平さを保つため、Nekochang Emoji Sequenceにおいては猫独特の文字追加を最小に抑える。

そして、現段階において表現できるべきNekochang職業としては、人間らに癒しを与える「セラピスト猫」のほか、「招き猫」「駅員(駅長)猫」「害獣駆除猫」が挙げられる。これら職業Emojiは、犬の例で見たように、Emoji ZWJ Sequenceで実現できる。セラピストEmojiは存在しないが、「🐈(連結)❤️」のようにすることで、Codepointの追加を最小限に抑えられるだろう。

問題は、Emoji Modifier Sequenceによる毛色表現の範囲である。たとえば「黒ブチ猫」「トラ模様」「ミケ」など、ありとあらゆる毛色に対してCodepointを追加していく事は、好ましくない。猫独特の文字追加となってしまう可能性が高いからである。となると、なるべく一般化した表現として、「二色」「三色」を指定する文字、「トラ」「ハチワレ」等の模様指定文字を導入するのが良いのではないだろうか。

たとえば「🐈[二色]⬛🏻[ハチワレ]」と指定すれば(Emoji Modifier SequenceはZWJ(連結文字)を用いない)、文字数こそ5文字になってしまうが、文字の追加を最小限にして実現できるだろう。

このように、現存のUnicode Emojiという枠組みを利用して、Nekochang Diversityに配慮したEmojiを導入する道筋は、困難と言う程ではない。近い将来の動物社会進出に備えて、Nekochang Emoji Sequenceの本格的検討の開始、そして、全Nekochangが、自分に相応しいEmojiを持つことのできる社会の到来は、すぐそこであろう。